汽水域のひろば

公益社団法人 日本水環境学会 汽水域研究委員会

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活動報告

第25回日本水環境学会シンポジウムセッション「地球温暖化を巡る水環境の現状・課題と対応」を開催しました(2022年9月6日)

ハイブリット開催となった今回は、2022年9月6日午前に熱帯・亜熱帯地域水環境研究委員会と合同セッションを開催し、汽水域研究委員会からは前半に4題の講演が行われました。概要は下記です。

「気候変動と汽水域」山室真澄(東京大学)
地球温暖化が日本の汽水域、特に汽水湖に及ぼす影響を整理した。汽水域では海の沿岸域同様、地球温暖化による水温上昇と淡水流入量の増加によって、底質中有機物が増加すると考えられる。汽水域ではそれに加え、海水面上昇による高塩分水流入量が増加することで成層の強固化が進むと予測され、これらにより現在より貧酸素化が進みやすくなると考えられる。

「霞ヶ浦における夏季の湖岸と湖心の水温の違い」小室隆(港湾空港技術研究所)
潟湖である霞ヶ浦で、夏季の表層水温が湖岸域と湖心で異なることを示した。湖岸域は湖心よりも温まりやすく冷めやすいので、平均水温では湖心との有意差は無かったが、漁獲対象種であるワカサギが暑さで斃死するとされる30℃以上の水温で比較すると、湖岸部の方が湖心よりも有意に高かった。魚類や二枚貝などは湖岸部を主な生息域とすることから、湖心部での水温モニタリングだけでは、温暖化が生態系に与える影響が過小評価される可能性がある。

「汽水域における塩分上昇に伴う硫化水素の生成について」管原庄吾(島根大学)
実験結果から、塩分が3PSUを超えると硫化水素の生成は基質濃度に依存せず最大生成速度に近い速度となったことを報告し、温暖化によって海水面が上昇して塩分が高くなることにより, 青潮が発生しやすくなる可能性を指摘した。また淡水・汽水にかかわらず貧酸素化が進むと鉄還元菌によってリン酸鉄のリンが遊離するが、汽水域では硫酸還元菌によって生成された硫化水素もリン酸鉄と反応して硫化鉄を生成しリンを遊離させるため、淡水域よりも貧酸素化によるリン溶出量が大きくなる。

「波浪による底質輸送を伴う人工海浜におけるアマモ生息条件に付いて」伊豫岡宏樹(福岡大学)
ドローンによる撮影や潜水調査、音波測深機による人工海浜の地形変化と、植栽されたアマモ場の変化について紹介した。人工海浜は堤防で囲まれた形状で、開口部には潜堤が設けられているため、砂の流出はほとんど無かった。このような状況で、安定したアマモ群落は東部の地形変化が少ない範囲に形成されていたが、同様に地形が安定している西部では形成されていなかった。その原因としてアオサが堆積することが考えられる。

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